営業所の所長として異動してきたAさんは酒豪で声も大きくて一見、怖そうな感じの人でした。毎日、一緒に仕事をしていく中で3人の子供がいてその子達が小学生の時に離婚、3人とも自分で引き取って育てた経験のあるシングルファザーだったことがわかりました。3人の子供は成人し、会社では所長という立場にまでなるエネルギッシュなAさんは毎日みんなのことを気にしてくれ、声かけしてくれる繊細な面も持ちつつ、豪快に笑わせてくれるみんなの父であり母であるような人でした。 お昼にはお釜でご飯を炊いてくれスーパーに惣菜と漬物を買いに行き、みんなで笑いながらお昼休みを過ごしました。ただの会社での付き合いだった社員たちが自分の辛いことや楽しいこと、たわいもないことを話しながら食事を囲む自分のファミリーにいつの間にかなっていきました。 5年程そんな日々が続いた楽しい日々に突然、終わりがきました。Aさんの異動です。 みんな寂しかったけれど会社員なので異動での別れは自然に受け入れる形となりました。 しかし、異動した2ヶ月後、Aさんが仕事を休んでいるという話を耳にしました。 Aさんからその様な連絡は来ていなかったので遠慮しながらも家族同様に思っていたので恐る恐る連絡してみたところまさかの入院しているとの返事が返ってきました。 ステージ4の肺がんで脳に転移している、復帰に向けて治療しているから心配しないで、との事でした。 その日を境に治療のこと不安なことなど頻繁に連絡を取り合いましたが入院中に骨折をし、その手術をすることになったその日以降、連絡が途絶えてしまいました。 その1ヶ月半後、Aさんの訃報を知らされました。 毎日毎日涙がでました。 一緒に笑って過ごした分と同じ位、もしかしたらそれ以上に涙が出ました。 人の死でここまで悲しんだの初めてです。他の社員も同じことを言っていました。なんでこんなに涙が出るんだろう、と…。 一周忌を迎えますが今でも思い出話をしてはみんなで涙しながら笑っています。