あれは何度目の出張の事だったか。社会人としてのキャリアも10年を過ぎ、実務にも余裕が出来てきた頃の事だったと記憶している。私は某有名スーパーマーケットの肉屋で働いている。大卒で入社した時はローカルの、知る人ぞ知ると言ったスーパーだったが、時代に恵まれ、ちょっと風変わりなビジネスモデルがメディアにも重宝されたのだろう、TVでの露出が増え、あれよあれよと言う間にみんなが知る様な大企業に成長した。店舗数も増え、取引先も増える中でその成長に付いていけていないのは自分だけだと思っていた。それまでの出張と言えば、馴染みの問屋に顔だした後、向こうの行きつけに行って酒飲んで終了。これからもよろしくねー、ってなもんだった。今回もそんな気軽な気持ちだった。いつもの馴染みのメンツに馴染みの場所、やる事はいつもと同じはずだった。そう思っていた。何の緊張感も無いただの日常の延長がまさか週間販売実績1000万円のメガヒット商品を産み出すキッカケになる会社にとってもエポックメイキングな一日になるとはこの時誰が予想出来ただろうか? これから語られるストーリーは何処にでもいる平均的なサラリーマンが、ある大仕事を行う物語である。何も考えず、未来を見据えず、ただ、今のままが続けば良いと思っている全てのサラリーマンに勇気を与える奇跡の物語である。