某銀行に勤務していた若手社員だった私は、毎日窓口でお客様の対応をしていました。当時は少し多く預金を預けて頂いたお客様には、サランラップや食器用洗剤など、粗品をバンバンお礼としてお渡ししており、私も先輩に習ってバンバン粗品をお客様にお渡ししていました。そのせいもあり、もらう粗品の種類を指定してきたり、もっと頂戴!と要求してくるようなお客様もちらほらいらっしゃいました。 ある夏の日。お渡しできる粗品に、新しく素麺が登場しました。季節の食べ物ということもあり、夏しかお配りできないので、とにかく私は積極的に粗品に素麺を選んで配っていました。夏の暑さが特に厳しい日は、個人のお客様の足が遠のきます。そんな時でもATMだけは混み合っており、「暇だなぁ〜」そう思いながら窓口で待機していた時でした。ATMをご利用されていたご年配の女性のお客様が、こちらにむかって急に何かジェスチャーをしてきたのです。しかし、そのジェスチャーは「こっち来て!」にも「助けて!」にも見えず…なんだなんだと思っていると、ついにお客様はATMから大きな声でこう言ったのです。「そうめん!」私はギョッとして、ATMを使ったからって流石に素麺は渡せないよ…と思いながら「そうめん?」と半信半疑で聞き返しました。するとお客様はまた「そうめん!」と言うのです。後ろで一個下の後輩が「そうめん?(笑)」と言いながら笑っている声が聞こえてきました。やれやれ…うちはスーパーじゃないんだよ…そう思っていると、お客様が私のいる受付カウンターまで歩いてきて、「ちょうめん!」と言われました。どうやらATMでお通帳を記帳したところ、残りのページが少なくなったので大丈夫か確認したかったようです。 私は素直に「お客様が素麺って仰ってるのかと思ってパニックになってました(笑)」と言うと、お客様は「私も貴方が急に素麺なんて言うからびっくりしたわよ(笑)」と笑ってくださり、一部始終を見ていた周りの上司や同僚も皆んな笑ってくれ、私の若手時代の面白エピソードとなりました。