私が店長をしていたたこ焼き屋さんは、元気を売りにしていたこともあって、アルバイトと正社員の距離も近く、メンバーみんなで楽しく仕事をしていました。しかし、そんな私の努力も知らずにいつも空気を壊してくるのが社長で、怒る必要のない事でアルバイトや私にいつも怒鳴りつけてきます。しかもお客さんの前で聞こえる様にする為、スタッフだけでなくお客さんの空気も悪くなり、社長が入ってくると帰るお客さんまでいました。 その日は私とバイトの佐藤君の二人だけで営業していました。佐藤君は愛想とノリが良く、仕事もできたのでお客さんにも好かれていましたが、怒られとすぐパニックになってしまいミスを連発する側面がありました。 社長は入ってくるなりいつも通り私達を睨みつけます。私は慣れていたので平気でしたが、佐藤君はそうではありません。社長に睨まれた佐藤君は気丈に振る舞っていましたが、明らかに怯えています。しかし、ここでいつものミス連発パターンに入られるときついです。なぜなら今日は私達二人しかいないからです。しかし、そんな事に気をつかえる社長ではありません。入店から30秒で怒号が飛びます。 「お前動き悪いぞ!」 気丈に振る舞っていた佐藤君が完全にビクビクし始めました。パニックゾーン確定です。 私は社長の目を盗んで佐藤君にフォローを入れましたが、その程度で佐藤君のパニックは止まりません。 小さなミスを繰り返す佐藤、その度怒鳴る社長、増していくパニックと減っていく客。 客が減っているのに慌てふためく店内で佐藤君はついに大きな事件を起こしました。 青のりが入った大きな袋を持ったまま足を引っかけてすごい勢いで青のりをまき散らしました。しかもその先に居たのは社長で、社長のはげた頭に青のりが張り付きました。佐藤君は動揺し、社長は鬼の形相でしたが、私とカウンターに座っていた常連客が大爆笑し、一気に店の雰囲気が明るくなりました。 私は社長からもっと嫌われましたが、その月の売り上げは本店を差し置いて一位だったので、何とか文句を言われずに済み、社長の来店頻度も激減したため、佐藤君を含め、従業員一同以前より楽しく仕事を出来るようになりました。